「ナンピンって危ないって聞いたことあるけど、本当にダメな戦略なの?」
そんな疑問を持っているFX初心者の方も多いのではないでしょうか。
ナンピン、とは、相場が自分のポジションと逆に動いたときに、追加で同じ方向にエントリーする手法のことです。
株式投資でも昔から使われている手法であり(参考:JPXの株式基礎知識)、FXでも多くのトレーダーが活用しています。
一方で、使い方を間違えると損失が膨らみやすく、“諸刃の剣”とも言われる戦略でもあります。
とくにレバレッジをかけた取引では損失が急拡大するリスクもあるため(出典:金融庁 FX取引の注意点)、正しい知識とリスク管理が必要です。
この記事では、ナンピンの基本的な意味から、FXやEA(自動売買)での活用法、筆者自身の戦略まで、初心者の方でもわかりやすく丁寧に解説します。
ナンピンとは?FX・株での基本戦略

ナンピン(難平)とは、含み損が出ているポジションに対して、同じ方向に追加エントリーを行う手法です。
価格が下がったタイミングで買い増すことで、平均取得価格を下げて、少しの反発でも利益が出しやすくなるのが特徴です。
例)FXでのナンピン買い
たとえば、ドル円を150円で買ったあとに148円まで下がったとします。
ここでさらに148円でもう1ポジション買い増すことで、平均取得価格は149円になります。
その後、149.5円まで戻れば、最初のエントリーはまだ損失でも、全体としてはプラスになる可能性があります。
このような戦略は、株式投資でも昔から使われてきた手法で、リバウンドを狙った「押し目買い」として知られています。
EA(自動売買)でもよく使われる戦略
近年では、ナンピンを組み込んだEA(エキスパートアドバイザー)も多数存在します。
たとえば、「一定間隔でナンピン」「ロットを固定して最大5回までナンピン」など、ルール化された戦略として自動売買に組み込まれているのです。
ただし、使いどころを間違えると大きなドローダウンを招くため、戦略の理解とリスク管理が欠かせません。
ナンピンは、“危ない戦略”ではなく、“使いどころを選ぶ戦略”です。
FXや株、自動売買でナンピンを使うなら、まずはその特性を正しく理解しましょう。
ナンピンとマーチンゲールの違い(FX/株共通)

FXや株、自動売買(EA)の世界では、「ナンピン」と「マーチンゲール」が混同されることがあります。
どちらも価格が逆行した際にポジションを追加する手法ですが、ロットの扱い方に大きな違いがあります。
ナンピン:ロットは一定 or 緩やかに増加
ナンピンは、価格が逆行したときに同じ方向へ追加エントリーを行い、平均取得価格を有利にすることが目的です。
- ロットサイズは通常固定、または少しずつ増加(例:1→1→1.5など)
- 戻りを狙って、全体の含み損が解消 or 利益になる地点で決済
多くのナンピン系EAはこの設計を採用しています。
マーチンゲール:ロットを倍々に増やしていく
マーチンゲールは、ナンピンよりもさらに攻撃的なロジックです。
損失を取り戻すために、エントリーごとにロットを倍に増やしていくのが特徴です。
- 1回目:0.1ロット → 2回目:0.2ロット → 3回目:0.4ロット → …
- 少しでも反発すれば、全体で利益になるよう設計されている
ただし、逆行が続くと一気にロットが膨れ上がるため、資金が尽きやすいという致命的な弱点もあります。
どちらが安全か?
安全性で言えば、ナンピンの方が遥かにコントロールしやすいです。
特にFXや株の世界では、**マーチンゲールは“資金管理が極めて難しく破綻リスクが高い”**とされており、推奨されることは少ないです。
EAや自動売買でナンピンを使う場合でも、「マーチンになっていないか?」をチェックすることが重要です。
EA・自動売買におけるナンピン活用の実例

ナンピンは裁量トレードだけでなく、自動売買(EA)でも広く使われている戦略です。
むしろ、機械的にルール通りに取引するEAだからこそ、ナンピン戦略が活きるとも言えます。
ここでは、実際に使われているナンピン系EAのパターンをご紹介します。
固定ロット・最大回数制限型
- ロットは常に同じ(例:0.1ロット)
- ナンピンは最大3回〜5回までと明確に制限
- 利益確定は「平均取得価格 + 目標pips」
このタイプはリスク管理がしやすく、ナンピン初心者向けEAとしてよく使われています。
ロット逓増型(マイルドマーチンタイプ)
- エントリーごとにロットを1.0 → 1.5 → 2.0などと増やしていく
- 損益がトータルでプラスになった時点で決済
- ロットの増加は緩やかなので、マーチンよりも資金破綻のリスクは低め
ただし、最大ロットと保有ポジション数の上限を設定しておくことが重要です。
トレーリングストップ併用型
- ナンピン後、トータルで含み益が出たタイミングからトレーリングストップで利確を狙う
- 「損を取り戻すだけでなく、大きく取るときは伸ばす」設計
- トレンドが発生したときにも対応しやすい
このタイプは、通常のナンピン戦略よりも“利益を最大化する設計になっており、やや中上級者向けです。
実際の市販EAや自作EAにも多く採用
FX自動売買で人気の市販EAにも、ナンピン型ロジックは多数存在します。
また、ナンピンを軸にした自作EAを開発しているトレーダーも多く、一定の支持がある手法といえます。
ナンピン系EAは「放置できる」というメリットの反面、資金管理の設計を誤ると一撃で口座が飛ぶリスクも。
自動売買だからこそ、最大ポジション数やロット計算はしっかり設計することが不可欠です。
ナンピン戦略を使うときの注意点
ナンピンはFXでも株でも、相場に逆行される場面で使う“防御的な戦略です。
うまく使えば高勝率・高利回りを狙えますが、適切な条件とルールを守らなければ、たった1回で致命的な損失を出すこともあります。
ここでは、ナンピン戦略を使う際に必ず意識すべきポイントを解説します。
トレンド転換時に弱い
ナンピンは「一時的な逆行は戻るだろう」という前提で成り立っています。
しかし、レンジブレイク後やトレンド転換の場面では、その“戻り”が来ないことも多々あります。
エントリー前に「今はレンジ相場か?」「トレンドの初動か?」を判断することが重要です。
最大ポジション数・ロット管理が命
ナンピン戦略で最も多い失敗例が「どんどんポジションが増えてロットが大きくなり、最後にロスカットされる」パターンです。
- あらかじめ最大ナンピン回数(例:3回まで)を決めておく
- ロットサイズは固定にするか、緩やかに増加する設計にする
- 資金に対して過大なロットにならないよう、証拠金維持率を定期的に確認
「戻るはず」という思い込みが一番危険
ナンピンは“戻ったときに利益を出す戦略”であり、“絶対に戻る”前提ではありません。
とくにFXのような流動性の高い市場では、一方向の動きが長く続くケースも珍しくありません。
「ナンピンすることを前提にトレードする」のではなく、「ナンピンは“最終手段”」という位置づけで考えましょう。
EA(自動売買)で使う場合も要注意
自動売買のナンピンEAは、一見安定して見えることも多いですが、「いざという時にどう崩れるか」まで検証しておくことが大切です。
- 過去チャートでのドローダウン分析
- 相場の暴落・急騰局面での挙動シミュレーション
- 「最悪の1回」に耐えられる資金設計ができているか?
ナンピンの本質は「価格が不利になったときのリカバリー手段」。
無制限に繰り返すものではなく、ルールの中で限定的に使うことで、戦略として機能します。
筆者が実際に使っているナンピン戦略

筆者もFXでナンピン戦略を使うことがありますが、無限ナンピンではなく、あらかじめ決めたルールの中で使う逆張り戦略です。
ここでは、株式投資でのナンピンと似たロジックをFXで応用している例をご紹介します。
■ 株のナンピンをFXで再現したような戦略
たとえば、あなたがある株を1000円で買ったあと、株価が900円・800円と下がった時にナンピン買いをすることで、
平均取得価格を(1000+900+800)÷3=900円に下げることができますよね。
FXでもこの「平均取得価格を下げて、少しの反発でトータル利益に持ち込む」という考え方は同じです。
■ 筆者の具体的なナンピン手法(逆張り・最大3回)

筆者のナンピン戦略は以下のような条件で行っています。
- キリ番や水平線など、多くのトレーダーが意識しやすい価格帯に近づいたら逆張りでエントリー
- その水準で反発がなければ、段階的にナンピンを最大3回まで実施
- ナンピンのたびに、平均取得価格が少しずつ下がる(買いの場合)
- 水平線で反発すれば、全体でプラスになる水準で一括決済
- 反発せずに、明確に水平線を割ってきたら潔く損切り
■ この戦略の意図と安全装置
- 反発ポイントで分割して入ることで、一発目の負けを取り戻す余地を持たせる
- しかし、「戻らない可能性」も常に想定して、最大3回で打ち止め・損切りルールを徹底
つまり、「粘りすぎないナンピン」=リスクを限定した逆張り型リカバリー戦略なのです。
ナンピンは「悪」ではなく、「使いどころと限度を決めて使えば頼れる手段」。
筆者自身も、反発根拠のあるポイントでだけ使い、崩れたら迷わず切るというスタイルを徹底しています。
まとめ|FX・EA・株でナンピンを使うなら“リスク管理”がすべて
ナンピンは、価格が逆行したときに追加でエントリーし、平均取得価格を有利にする戦略です。
FXや株の裁量トレードだけでなく、EA(自動売買)でもよく使われているほど、広く支持されているテクニックでもあります。
一方で、ナンピンには「反発すること」が前提となっており、反発しなかった場合の損失は大きくなりやすいというリスクも併せ持ちます。
だからこそ重要なのは、自分なりのルールを決めて運用することです。
- ナンピンは最大何回までにするか?
- どんな場面(水平線・キリ番など)で使うか?
- どこで損切りするか?
こうした判断基準を明確に持っておくことで、**ナンピンは“破滅の入り口”ではなく、“損失を回避するための有効な選択肢”**になります。
筆者自身も、最大3回まで・反発しなければ損切りというシンプルなルールのもと、ナンピンを活用しています。
FXでも、EAでも、株でも「コントロールできるナンピン」は武器になるのです。
ナンピンは「危険」ではなく、「設計しないと危険」。
正しく理解し、慎重に使えば、あなたのトレードを支えてくれる頼れる戦略です。
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